×閉じる

コンサルタントコラム
事業承継についての考察~後継者が苦労をしない為に今から出来る事~

事業承継についての考察~後継者が苦労をしない為に今から出来る事~

2020年06月10日

1.「データと国の動き」から見る事業承継

 

1-1. 事業承継より、生産性の向上…?

中小企業庁発行の中小企業白書をご覧になったことはありますでしょうか?そこでは政府の重点施策を含めて、中小企業に関するデータが表示されています。そちらでの施策を毎年確認しているのですが、本年中小企業白書が2020年4月24日に発刊されて少し驚化されました。これまで、数年に亘って、概要としてまとめられている資料の中に必ずと言っていいほど協調されていた事業承継が抜け落ちていたのです。今回特に強調されていたのは、「生産性(付加価値)の向上」、「目指すべき姿への支援策」というような、所謂次の世代では達成されているべき新しい企業の形でした。
確かに2020年2月から拡大したCOVID-19による経済被害は甚大でした。この2019年4月~2020年3月は経済打撃としては、働き方改革法案の施行、増税、コロナウイルス等企業経営者にとっては、無視できないものが多数あり、そういった時流を意識せざるを得ないことは明白です。

1-2. 日本の承継問題は未解決のまま

ただし、一方で事業承継の課題が世間一般として解決しているのか。懸案される問題は無くなったのか。かといえば、それば全くその通りとは言えない状況です。前述した、中小企業白書からいくつかデータを明示すると、全経営者の年齢層のうち、40代以下の割合は18.3%です。50代の構成割合は23.3%、60代は30.3%、そして70代以上が28.1%となっています(図1参照)。実に全経営者のうち6割近くが60代以上となっています。この点を問題視する方もいますが、経営者の年齢層が高いことはそう問題ではありません。一番の論点は事業の後継者が不在の企業が多くあることです。一般に、年齢を重ねるとそれを理由に引退を考える、迎える経営者が増えると考えられます。筆者も現場で意見を聞いて回ると「75歳を超えるまでに引退を迎える準備を進めなければ、事業承継の対策もそのままになってしまう傾向にある。」と耳にすることが多いです。白書上のデータによると経営者年齢別に後継者の有無を確認したところ、60代の経営者で50%、70代が40%、80代で30%の経営者に後継者が不在という事でした(図2参照)。かの中国清王朝第五代皇帝が、自分自身の後継問題に苦労したことから、その後の後継指名を制度化したことでその後の清王朝では皇帝による悪政が少なくなり、約300年に亘る歴史を続けたという逸話があります。時代が変わってもその原則は変わることなく後継者の問題は事業の興亡にも大変な影響を与えます。話がそれてしまいましたが、今回、事業承継についてのお話を進めて行きたいと思います。
 

図1:社長の年齢分布
 

図2:社長年齢別の後継者決定状況
 
出典:2020年度版中小企業白書よりHTMLソース
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/PDF/chusho/99Hakusyo_zentai.pdf
 

2.事業承継「3つの選択肢」

 

2-1. 親族内承継

さて、一口に事業承継と言っても、何通りか分類することが可能です。皆様が最もイメージするのは「親族内承継」でしょう。血縁による承継です。承継する側の経営者が自身の蓄えた財産と、育ててきた法人を次世代に託します。この承継方法は最も理解が得られやすいでしょう。血縁による承継は古来より、多く行われてきています。そして広く行われていることからも、取ることの出来る手段・手法が多岐にわたることが特徴です。この親族内承継において、重大な課題はこのコラム執筆当日にご相談を頂いた経営者様もおっしゃっていたことですが「必ずしも後継者が事業を引き継ぐ意志・資質を持ってるとは限らない」と言う事です。そして手法として贈与や、相続を中心としたスキームを活用することが多い為、事業を引き渡す際に、その経営者が育てた事業を手放す対価を得ることができません。「世代交代だから」と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、おそらくこの「対価を得られない。」ということが、経営者が事業承継をしたがらない理由の大きな一つだと筆者は考えています。感情の面で納得が難しいのは経営者だけではなく、後継者以外の相続人にもです。後継者は先代経営者から「会社」という財産を引き継ぐこととなります。では他の相続人はどうでしょうか。きっとこう考えたり言われるはずです。「私は損をしていないだろうか。」「なんでお兄さんはあれだけしてもらっているのに、あなたは何も貰っていないの?不公平よ。」
親族内承継は最もポピュラーな形の事業承継でありますが、同時に最も争族を引き起こすリスクを孕んでいます。親族内承継はいかにそのような争族や、お家騒動を引き起こさせないようにするかが重要になります。

2-2. 親族外承継

次に紹介するのは、「親族外承継」です。これをさらに分類すると、従業員承継(MBO)と第三者承継(M&A)と言う形で分けることが可能です。従業員承継はあまり聞き覚えが無い言葉と思いますが、内容はシンプルで、経営幹部や従業員に承継するということです。これは、身内に後継者がいない場合、非常に有効な選択肢です。事業のことを理解している人間に、その会社の事を任せるということが出来るので、事業継続上の不安が少なくなります。一方で、従業員と経営者で求められる事が大きく異なることについては留意しなければなりません。その一つは代表者の連帯保証です。これが残ることで後継候補の家族からの反発や不安が発生することは往々にして多く発生しています。

2-3. 第三者承継

「第三者承継」についても触れておきます。第三者承継はそれまでその会社で行ってきた事業と関わりの無い人(法人)に会社の売却を実施します。あるいは、第三者を経営者として招聘します。これによって将来性のある企業や人物に事業を任せることが可能になるので、それまでに想定していた戦略とは全く異なった事業成長や拡大を望むことも可能になります。実際に将来的な事業承継を見据えた経営者の方で、自身が社長を継続する条件で大手企業への株式売却を行い、その後その大手企業が上場。自信も上場企業グループ会社の社長となった。というような、それまででは想定外のキャリアを歩んだお客様もいらっしゃいました。
それらの事象の一方で、「誰に」「いくらで」といった相手方の発見と条件の調整については非常にデリケートな交渉が必要になります。ここで求められるのは、適切な知識と事業運営上での適切な経営管理体制です。こういった内部体制は、特に第三者承継の際には、価格決定に大きな影響を持つ要素となります。

3.事業承継で引き継ぐ内実「2つの権利」

 

3-1. 所有権

さて、前段落にて3つの種類についてご説明を致しました。では具体的に事業承継で引き継ぐものは何か?という事について簡単に触れておきます。結論から申し上げると、それは企業の「所有権」と「経営権」です。多くの事業承継の記事を拝見していると、「所有権」すなわち株式の移行についての内容が多く触れられていると思います。一般に事業承継対策と言うとこの将来的に発生するであろう、株式の移行に係る費用(売買であればその対価、贈与や相続であれば、それに付随する費用や税金)を最小化する為のスキーム構築、制度の活用が多く話題に上っています。実際、経営者にとっての関心事はそれであり、「損をしない」為には何をすれば良いのかということが非常に重要になるのです。例えば、その手法や制度としては、親会社の株価評価方法における子会社株式の評価方法において、含み益に対しての法人税相当額を控除することで、持ち株会社化以降の株価の上昇について対策を行う事であったり、1株当たりの純資産額を減少させて株価を抑制させるために相続税評価額が時価よりも数段低い収益不動産や、高層階タワーマンションを購入するような対策も見られます。他にも制度改正されたことにより使い勝手の向上した、事業承継税制や、相続時精算課税制度、暦年贈与等の各種制度や対策が世に多く出ています。
更に細かい話をしてしまうと、「株式」には、3つの権利が内在しています。会社の重要決定事項を決める事の出来る「議決権」、利益剰余金からの配当を受け取ることが可能になる「分配請求権」、そして会社が清算された場合、残余財産を受け取ることの出来る「残余財産請求権」の3つです。これらの権利を制限する「種類株式」を活用する承継スキームもよく活用がされていますが、ここでは割愛をします。

3-2. 経営権

もう一つの権利としては、経営権です。これは便宜的に経営権と読んでいるに過ぎません。イメージとして適当なことは、「社長」として、会社の運営の最終決定をしていくということです。日本の中小企業における「社長」とはほぼ80%がオーナーである為あまりイメージが持たれにくいかもしれません。
例えば自身の子に会社という財産を渡したいが、「経営者」として会社を引っ張ることが出来るかと言えば、現時点では疑問である。というケースがあったとします。そして番頭さんに一時的に企業の経営を任せるというケースなどは、まさにこの会社の事業承継を一度所有権と、経営権を分離しておくということになります。先ほど、事業承継の3つの「選択肢」をご説明しました。そして今回は「2つの権利」についてご説明を行いました。「事業承継を行わなければならない」という必要性に迫られた際、実は現時点でのオーナー社長は、この合計6通りの論点の中から最適解を選び出さなければならないのです。

4.後継者が「良かった」と思える成功につなげるための3ポイント

 

4-1. 今できること、とは

これまで筆者は多くの事業承継のテーマでお話を承ってきましたが、その中でも「明確に後継者が定まっており、この1年で承継を完了する予定。」と言うような企業様にお会いすることはほぼありません。多くの経営者は後継者候補を定め、いつか来る承継の日に向けてその教育やポジションの経験を詰ませるというような動きを取っています。この状態から、承継を実行する期日が決まっているケースは実は少なく明確な対策が打ちにくい。というケースが多くあります。そういった企業でもやっておいた方が良い事はいくつかあります。それは大きく次の3つになります。
①株価の把握、②資金調達環境の改善、③内部管理体制の構築です。

4-2. 株価の把握

それぞれ解説していくと、①株価の把握はまずマストです。株価の計算は会社の形態と、相続税評価による純資産と上場企業の類似業種との比較それぞれの算出方法を組み合わせて行われます。そういった前提を度外視してざっくりとした計算を行うと、会社の決算書に掲載されている純資産の部の合計金額の金額が株価に相当するというイメージです。これによって事業承継に必要な資金の金額の目安と、対策の要不要を判断します。個別に対策を実施するのであれば、適切でリスクの低いスキーム構築を行っていきます。

4-3. 資金調達環境の改善

そして、次に必ず行うことが必要になることが、お金の貯まる仕組み作りと計画づくりです。それを②資金調達環境の改善という形でお示ししていますが、具体的に何をするのかというと、適切なお金の借り方を実現する為に資金の色分けを行う事、適切な条件で借入を行うための金融機関への情報開示や説明を行っていくことです。
多くの企業で発生している勘違いが、「借入は終わっていくから徐々に減らしていっている」という認識です。会社の借入の構造として毎年事業を通して生み出す資金と借入の月々の返済額の12か月分を比較した時にこの数字がプラスになっているかマイナスになっているかで、状況が大きく変わってきます。これがもしマイナスなのであれば、構造的にその企業は借入の返済を行うために借入を行わなければならなくなります。こうなると、調達しなければ事業が回らなくなるので、多少自社の体力に合わない条件でもとにかく借入優先になってしまったり、次の投資への意志が弱くなってしまします。これは適切な資金の調達方法を取っていれば、改善が可能です。そしてそれを行うことで会社に資金が貯まるようになります。現状でもし「利益が出ている割に、資金が貯まっていないな?」と感じることがあれば、それはこの構造的な部分が原因です。

4-4. 内部管理体制の構築

個々の部分の改善前後でぜひ実行していくべき内容は、内部管理体制の構築です。具体的には、業績の予実管理体制を構築する事と、資金繰りの予実を追いかける事です。これらを実行すると何が出来るようになるかと言うと、将来時点でキャッシュがどう増減しているのかが、明確になります。そうなると資金が必要なタイミングで余裕を持った対策が打てるようになったり、いつまでにいくら貯めることが可能なのかの計画組が出来るようになります。
実は、事業承継においてはこれが最も重要です。何れの対応を行うにしても必ず一定の資金が必要になります。その時に向けてこの章でお伝えした、①株価の把握(必要金額の決定)、②資金調達環境の改善(資金の貯まる仕組み作り、資金が必要な時に調達が可能に出来る環境づくり)、を通して資金を生み出すための計画を具体的に立てる事が可能になります。例え、後継者が今想定している方にならなかったとしても、例え、第三者へ事業を売却していくとしても、その貯めたキャッシュは決して経営者を裏切ることはありません。

4-5. 成功に近づけるために…

そして、これらを誰がやるべきなのでしょうか。これらは後継者が実行すべき事です。現経営者が長年蓄積してきたノウハウや「勘」は、常人では理解する子が出来ない精度まで高まっています。これについては、後継者は口を揃えて「理解が出来ない」と言います。その為後継者は財務を知ることを通して、事業の全体像や押さえるべき事実ベースの数値、そしてその数値は何によって発生しているのかの要因分析を通して理解していくことが必要です。そして、適切な金融機関とのお付き合いの仕方を現経営者の基で理解しておくと、後継者はその付き合いの手法で迷うことなく自身の代を迎えることが可能になります。
現場から学ぶ事ももちろん重要ですが、「管理」面から会社の事を知ると全体像が見えた状態から始めることが可能になる為、後継者の経営者への成長スピードが飛躍的に向上します。

5.まとめ~「いつかの」事業承継に向けて今から出来ること~

 
いくぶんか長い文章を書きましたが、要点をまとめて掲載致します。

1)事業承継「3つの選択肢」
①親族内承継
②従業員承継
③第三者承継

2)事業承継で引き継ぐ内実「2つの権利」
①所有権
②経営権

3)後継者が「良かった」と思える成功につなげるための3ポイント
①株価の把握
②資金調達環境の改善
③内部管理体制の構築

今回は、事業承継における概要と、進むべき3つのポイントを記載しました。この3)で触れた3つのポイントは、実は事業承継を10年後、20年後の事象として考えている経営者にとっても、非常に重要な戦略となります。なぜならば資金を貯める事、承継時にいくら必要になること、そしてご自身の退職金をいくらくらいに設定し、その後の個人としてのライフプランも含めた設計が中小企業経営者には必要不可欠だからです。
いずれにしても、資金を準備する、という観点から見ると事業承継に向けてすぐに財務の対策を進めることが必要になってくると考えています。いざ事業承継する際に思いがけない落とし穴がないか、一度自社の財務状況を確認いただいて損はないでしょう。今後の方針を見出せるよう、弊社では無料経営相談を承っております。過去事例などの「ここだけの話」も可能ですので、お気軽にご相談ください。

お電話での無料経営相談はこちら

WEBからの無料経営相談はこちら

コンサルタントコラム一覧に戻る